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名古屋でインプラント

インプラント治療のポイント

診療案内
Diagnosis and treatment guide

インプラント治療成功への秘訣

インプラン治療を成功へと導くためにはいくつかのポイントがあります。
インプラント治療に使う人工歯根
虫歯、歯周病、あるいは外傷などにより不幸にも歯を失ってしまっても、インプラント(人工歯根)をアゴに埋めることにより、噛み合わせや審美的な回復を図ることが出来ます。
この様なインプラント治療は、正しく行われ、後の管理(メインテナンス)もしっかりしていなければ成功しません。
そこで、名古屋のコンドウ歯科で考慮して取り組んでいるいくつかのポイントをお伝えします。

インプラントと通常の義歯やブリッジの治療との大きな違いは、インプラント埋入手術、これに関連した骨組織や軟組織のマネージメントなど、侵襲がある外科手術を伴うことです。これによる全身への負担および経済的な負担がかかり、通常の歯科治療以上に治療結果への期待が一層大きくなります。
それに応えるべく、慎重な治療姿勢、リスク管理、メンテナンスなどを十分に行う必要があります。

天然歯とインプラントの咬合

インプラントにおいても天然歯と同様の咬合を与え、全顎的な(お口全体の)バランスを考えて咬合接触を付与します。
そうすることにより、インプラントを意識せず、普通に食事できます。
インプラントと天然歯が混在する場合、咬合様式は、犬歯誘導またはアンテリオールグループファンクションにします。前歯インプラントでは中心咬合位、偏心位のコンタクトは必ず避けます。咬合接触は、インプラント側を緩くすることは中間欠損では認められますが、遊離端欠損ではインプラント側を緩くすることは避けます。

基本的には天然歯による側方および前方ガイドを付与し、インプラント体には側方力をかけない咬合接触関係を付与します。臼歯離開咬合とします。
もし、インプラント上部構造による顎運動のガイドを付与させてしまうと、側方力や回転力が生じやすく(インプラント頚部に曲げモーメントが発現します)、インプラント支持骨の吸収やスクリューの緩み、前装部の破折などを起こしやすくなります。そのため比較的太い直径で長いインプラント体を埋入します。可能であれば、他のインプラント体と連結します。
※ 咬合接触の位置がインプラント体から遠く離れるほど、曲げモーメントが増大し、スクリューの緩みを発生させやすくなります。

不幸にもインプラントに破折が確認されたら、フラグメントフォーク ( 破損したアバットメントおよびブリッジスクリュー破折片の除去に使用 ) 、スクリューエクストラクター ( アバットメントスクリュー破折片の除去に使用 ) 、トレフィンドリル EV ( オッセオスピードEV インプラントの除去に使用 ) などを用いて除去をします。

対合歯との頬舌的位置関係は、過度に傾斜させず、歯軸方向への咬合力の伝達や機能咬頭での咬合接触を配慮した埋入位置、方向を検討します。

天然歯による両側臼歯部の垂直的咬合支持が確立している場合にはインプラント体への力学的リスクは低いと考えられます。インプラント治療は義歯治療に比べて支持力が大きく、残存歯の咬合負担を軽減できることが多いが、過重負担には注意が必要です。

インプラントは、定期的な咬合の管理をしっかり行っていきます。

インプラントとの距離はどれくらい開ける必要があるか?

天然歯とインプラントの近接限界は標準で 1.5mm、インプラント間(フィクスチャー間)の近接限界は 3mmです。
これ以上近づくと血管からの栄養が供給されにくくなり、骨頂部の吸収が起きる可能性があります。
インプラントの頬(唇)側および舌(口蓋)側に 2mm以上の硬組織が必要です。不足する場合には骨移植などが必要です。
インプラント体の埋入では、隣在歯の根尖と接触しないよう一定の間隔を保ちます。
乳頭再建の可能性はコンタクトポイントから骨頂までの距離に関係するとされています。
辺縁歯肉より 3mm根尖側方向にインプラントが位置するように埋入します。
インプラントとの距離
上顎前歯部など審美領域におけるインプラント体の埋入位置は、垂直的には天然歯のセメント- エナメル境(CEJ)から3 mm 根尖側、水平的には天然歯の唇側・頬側から1 mm 以上口蓋・舌側に設定します。
審美的にインプラント修復をするためには、インプラント埋入部位に必要な硬組織を確保、または造成する ことでです。
埋入計画に際しては、インプラント体周囲に高さ・幅ともに十分な骨が存在するよう考慮します。骨量は歯槽骨の高径で10mm以上、幅径は6mm以上が理想です。
水平的には、インプラント体の頬舌側に1.5mm以上の皮質骨の厚みを確保します。軟組織も頬側に2mm以上あることが望ましい。顎堤の唇・頬側の幅はインプラント体の直径に加えて2mm以上必要で、足りなければ骨増生などの外科処置により骨幅を増やします。また、インプラント体の埋入が可能であっても、頬舌的な陥凹が審美性の回復の妨げとなる場合には、硬・軟組織移植を検討する必要があります。
骨質は、Lekholm & Zarbの分類で、タイプⅡおよびタイプⅢが理想的な骨質と言われています。

また、神経に障害が及ばないようにインプラントとオトガイ孔は 5mm程度、下歯槽管との距離は 3mm以上あけます。辺縁歯肉より 3mm根尖側方向にインプラントが位置するよう埋入することが,インプラントの審美的修復に必要です。
上顎洞との距離が5mm以上ならソケットリフト、それ以下ならサイナスリフトで骨造成をします。
骨の高さが6mm以上ならショートインプラントが可能です。(埋めるスペースがある場合は骨造成なしでできます)
オトガイ孔部に骨補填剤が接すると神経麻痺を起こす事があるので、骨造成をする際、漏れ出さないように注意します。

ドリリングにおける注意事項

骨組織は、47〜50 ℃以上に加熱されると組織壊死を起こしてしまいます。 ドリリング時には、熱の発生を最小限に抑え、インプラント周囲骨の活性を確保することが大切です。
・十分な量の冷却した滅菌生理食塩水による注水
・良く切れるドリルの使用
・小刻みな上下運動と間欠的な切削(ポンピング運動)
・適切な切削圧などにより、
骨火傷に注意をします。
特に硬い骨の場合、血管が少なく骨と結合しにくく、切削時の熱による骨の火傷、圧迫壊死を起こしやすくなります。十分な注水(生理食塩液)による冷却が必要になります。
CT 値(Hounsfield 単位)が850HU 以上のものは埋入窩形成時に摩擦熱による火傷生じやすく、350HU 以下であると軟らかい骨質のため一次固定が得られにくいと言われています。

歯間隣接面コンタクトエリアの基底部から骨の頂点までの距離

コンタクトポイントの基底部から骨頂までの距離が5mm以下の時は乳頭はほとんど100パーセント存在し、距離が6mmになると乳頭は56パーセント存在し、距離が7mm以上になると、乳頭は27パーセント以下しか存在していなかった。という報告があります。( Tarnow DP,1992 )
従って、5mm以下にならなければ、乳頭が保たれます。
※ 歯間乳頭とは、歯と歯の間に見られる三角形の形をした歯肉のことです。この部分にはプラークがたまり易く炎症を起こしやすいため、失われる危険性があります。
水平的歯根間距離の報告においては、歯根間距離が大きい場合、特にこれが 2 mm 以上であると歯間乳頭を再建させることが非常に困難となります。

切開線の位置と縫合

インプラントを埋入する際、切開線は、歯肉頂、あるいは頬側よりに切開を加えます。
切開線の位置や範囲などによっては、インプラント周囲への血流を阻害することもあるので、口蓋からの血液供給は重要です。(創面の裂開を防ぐ方法になります。歯間乳頭の高さの確保にもなります。)
縫合はテンションフリー(強く締め過ぎない)で行い、 血行障害をおこさないように縫合は過密すぎず、必要最低量の縫合にします。結び目は創直上にはおかず、左右いずれか(頬側)に寄せます。ナイロンなどモノフィラメントの糸は、緩みやすいので結紮を外科結び、三重結び等にします。

咬合高径

骨頂部から対合歯までの距離は約7mm以上必要で、5mm以下の場合、上部構造の装着は不可能です。
咬合高径が低いとアバットメントが低くなり、セメント固定の場合は上部構造が脱離しやすく、スクリュー固定の場合は固定できないことがあります。
また、対合歯が挺出し咬合平面の不正が生じている場合には、インプラント体埋入手術前に咬合平面の修正が必要です。
顎関節に異常がないか、顎位が安定しているか、パラファンクション(歯ぎしり、食いしばり、口唇や頬粘膜を咬む癖など)がないかなども診査しておきます。
■ 開口量の問題
最大開口時の開口量は上下顎中切歯切縁間で測定します。開口量が35 mm 以下場合、インプラント治療は慎重に対応する必要があります。また開口を一定時間維持できるかについても確認しておきます。開口量が小さいと、ドリルを装着したハンドピースの操作、インプラント体の埋入が困難なことがあります。たとえインプラント体が埋入できたとしても、後の上部構造装着が困難になるリスクがあります。
■ 咬合様式
有歯顎者では犬歯誘導あるいはグループファンクションが望ましい咬合様式です。

清潔域の管理

清潔域と不潔域の区別を明確にして手術を行います。
清潔域とは、滅菌された器材と滅菌レベルの着衣や覆布などを身につけた術者と患者の領域で、滅菌ガウンと滅菌グローブの装着で触れることができる場所と器材のことをさします。
インプラント埋入手術において術前感染予防を目的とし、ペニシリン系抗菌薬投与が推奨されています。

インプラント手術時の解剖学的リスク

1) 下顎のインプラント手術
  • (1)骨の吸収が進んだ臼歯部のインプラント埋入では、歯槽頂から下顎管までの距離が近くなるので、 下歯槽神経、下歯槽動・静脈損傷のリスクがあります。最も吸収がみられる下顎骨ではオトガイ孔の位置まで、舌側臼歯部では顎舌骨筋が付着する顎舌骨筋線まで吸収されます。手術時の伝達麻酔の応用は、確実な麻酔効果が期待できる一方、神経損傷の危険性や知覚鈍麻の延長などがあるので注意が必要です。顎舌骨筋線が近くなると粘膜骨膜弁の形成時に舌神経損傷、ドリルの舌下隙・顎下隙への穿孔のリスクがあります。
    また、二重下顎管などの形態異常にも注意が必要です。
  • (2)下顎小臼歯部のインプラント手術では、粘膜骨膜弁の形成時にオトガイ神経損傷のリスクがあります。舌下腺窩が深いケースではドリルが舌側皮質骨を穿孔し、舌下動脈あるいはオトガイ下動脈を損傷するリスクがあります。インプラント体の舌側への穿孔を避けるなどの配慮が必要です。
  • (3)下顎前歯では、インプラント体を唇側傾斜させて埋入窩を形成するとドリルが舌側皮質骨を穿孔し、 舌下動脈あるいはオトガイ下動脈を損傷するリスクがあります。
  • (4)オトガイ部からの移植骨採取は切歯枝を損傷し、前歯の知覚障害を後遺するリスクがあります。
2) 上顎のインプラント手術
  • (1)上顎洞底挙上術での外側壁の骨窓形成では、後上歯槽動脈、眼窩下動脈、眼窩下神経損傷のリスクがあります。
  • (2)上顎臼歯部でのインプラント体埋入手術では、上顎洞に穿孔し上顎洞粘膜を損傷し、上顎洞炎を起こすリスクがあります。
  • (3)骨量の不足、骨質不良のため、インプラント体の上顎洞迷入するリスクがあります。
  • (4)上顎臼歯部では、骨量の不足および骨質不良のため、オッセオインテグレーションを獲得できなかったり、 オッセオインテグレーション喪失のリスクがあります。
  • (5)上顎第二大臼歯部でのインプラント体の遠心傾斜埋入は、上顎結節を穿孔する可能性があり、翼突筋静脈叢損傷のリスクがあります。

免荷期間の目安

骨内に埋入されたインプラントがオッセオインテグレーションを獲得するためには、適切な免荷期間と徹底した機能圧の回避が絶対条件です。手術後2 週間位はそれまで使用していた義歯の使用はできるだけ控えてもらい、骨内に埋入されたインプラントに負荷を加えないようにします。
インプラントの免荷期間(咬み合せをさせない期間)は、下顎で3 ヶ月、上顎で6 ヶ月の期間、または骨質によりそれ以上が必要です。骨質により治癒期間を延長することで、最終的に強固なオッセオインテグレーションを獲得することができ、骨質による劣勢を克服できると言われています。
※ オッセオインテグレーションの確認は、 視診・触診、 ペリオテストやオステルなどの器機、 打診音などで判定します。

オッセオインテグレーション獲得の因子

・素材の組織親和性
・インプラント体の形態 (肉眼的)
・インプラント体の表面 (顕微鏡的)
・埋入部位の状態
・外科術式
・荷重状態
Brånemark がチタンが骨と直接接触することを発見したのが1950 年代です。
電子顕微鏡では、チタン表面の酸化膜に厚さ100Å(オングストローム)前後のプロテオグリカンの層を介して骨組織が接触している状態が観察されます。
埋入したインプラントが生着して、早期荷重に耐えられるようにするためには、インプラント体への表面処理が必要となります。

インプラントの設計

外科、補綴およびメインテナンスを含めた設計をすることが大切です。(トップダウン トリートメントの考え方が必要)
  ※ トップダウントリートメントとは、最終ゴールである上部補綴物の位置決めをしてから、
    インプラントの埋入位置、方向、太さ、埋入する本数などを決め、インプラント埋入手術を    行っていく治療方法です。
インプラントと上部補綴物
     図のように、上部構造をイメージして咬み合わせの位置を決めていきます。
審美的成果をもたらすためにはインプラントの選択や三次元的配置は極めて重要となります。
インプラント間の距離が狭すぎると骨の中の血液供給が不十分となり周囲の骨の吸収をきたします。
欠損部すべて、あるいはそれ以上インプラントを埋めるのではなく、ある程度距離(インプラント天然歯間は1.5mm、インプラント間は3mm以上距離を開けます)をとって埋めるとよいでしょう。
一方、本数が少なすぎても上部構造に過重負荷がかかり、ブリッジやフィクスチャーの破折、アゴの骨も負荷に耐えられなくなります。過長なカンチレバーやスパンに注意して、十分な剛性を付与するようにします。少数欠損であれば、欠損1 歯に対してインプラント体を1本配置、無歯顎では 4 〜 6 本以上必要で、 本数はこれより多いほうが成績は良好です。従いまして、インプラントの埋入に際しては、CT撮影された画像をもとに十分なシミュレーションを行って検討を加えたうえで、どの位置に、どの角度で、どの長さ・太さのインプラントを何本埋入するか等を決めていきます。
インプラント体の直径は3 〜3.5 mm 程度のものをナロータイプ、3.7 〜4.5 mm 程度のものをレギュラータイプ、5 mm 前後またはそれ以上のものをワイドタイプと分類します。インプラント体の直径は、推測される咬合力の大きさ、埋入部の骨幅、欠損部の近遠心径を考慮して決定します。たとえば大臼歯部にナロータイプのインプラント体を選択すると破折リスクが高くなります。
また、診断用ワックスアップなども参考に、開口量(上下顎間距離) 、クリアランス、顎関節異常の有無、顎位安定度、咬合再構成の必要の有無、パラファンクションなどを検討します。

天然歯との連結や過長なカンチレバーは原則的に避けます。
天然歯とインプラント補綴の連結は、歯根膜とオッセオインテグレーションとの界面の被圧変位量が異なるため基本的には行いません。

事前チェック項目

  • 1. 治療の要望と予算の確認
  • 2. 全身疾患
    糖尿病 骨粗鬆症 肝疾患 腎臓疾患 循環器疾患など
  • 3. 投薬の有無
    抗血小板剤 ビスホスホネート系薬剤
  • 4. 習癖
    たばこ アルコール類などをチェックします。
  • 5. インプラント予定部位の状態
    歯周病や難治性の根尖病変などにより保存不可能と診断した場合には抜歯を行い、病巣の感染性組織の徹底的な除去と抜歯窩骨面の掻爬を行う。歯周病罹患歯のポケットからインプラント周囲溝への細菌感染が波及する可能性があるためです。根尖病変に関しても、インプラント体に接近して根尖性歯周炎が存在すると、インプラント体に感染が波及し,インプラント体の除去を余儀なくされることもあります。
    矯正治療により歯列を整えたり、咬み合わせの悪くなっている修復物があれば、インプラントでの補綴修復と調和するように再製作しておきます。
    顎関節、咀嚼筋、パラファンクションなどもチェックします。

インプラントと全身疾病

■ 高血圧症
インプラント手術に対するリスクとして問題となるのは、高血圧症の原因となっている動脈硬化が進行して、脳(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞)、心臓(狭心症、心筋梗塞、,心不全)、腎(腎障害、腎不全)などに出現している合併症です手術による患者へのストレスが大きいと合併症が発生する可能性があるので注意が必要です。。
血圧のコントロールが良好であれば、通常のインプラント治療で問題が生じる可能性は少ないが、手術中の緊張により血圧が上昇して止血困難となる場合や、術後出血が起こることもあるので注意が必要です。
麻酔剤は、1 回の投与量が40μg(1/80,000 アドレナリン含有2%リドカインカートリッジ3.2 mL)までであれば循環動態に及ぼす影響は少ないとされています。
狭心症は、投薬により良好にコントロールされていればインプラント手術が可能ですが、術前に発作時の対応(ニトログリセリンの準備など)を十分に確認しておく必要があります。
抗血栓療法を受けている方は、局所止血で対応します。局所止血は縫合、パック剤、止血床により物理的に止血を行います。多数のインプラント体の埋入は避け、内出血斑(皮下出血)出現の可能性を事前に説明する必要があります。
■ 糖尿病
高血糖は組織、細胞を低酸素状態に陥らせ、好中球の機能を低下させ、創傷治癒不全の原因となります。また、オッセオインテグレーション獲得を阻害する可能性があります。 術創治癒不全のみならず、経過中のインプラント周囲炎発生のリスクともなります。
従って、糖尿病はインプラント体埋入手術、予後に対するリスクファクターになります。
インプラント埋入手術では、通常の待機手術の糖尿病の基準である空腹時血糖:140 mg/dL 以下、ケトン体(—)、HbA1c:6.9%(NGSP 値)未満を適用します。手術中、手術後の低血糖、高血糖に注意します。
■ 骨粗鬆症
骨粗鬆症は、手術時の全身的なリスクとは無関係ですが、インプラント治療の成功を妨げる全身的リスクファクターとして問題となる疾患です。インプラント周囲の骨密度が減少するとオッセオインテグレーションに時間がかかったり、うまく結合しなかったりします。術後の発症にも注意が必要です。正常なリモデリングが不能となり、オッセオインテグレーションの維持不能となることがあります。
骨粗鬆症の治療薬であるビスフォスフォネート系薬剤に関連する顎骨壊死の多くは、抜歯やインプラント手術といった顎骨に侵襲の及ぶ観血処置をきっかけとして発症し、きわめて難治性の疾患であり、治療法も確立していないので、インプラント体埋入手術は原則として禁忌です。
■ 経口抗凝固薬あるいは抗血小板薬を服用している方
抗血栓療法を受けている方のインプラント体埋入手術に関するエビデンスは不十分です。
多数のインプラント体の埋入は避けます。
内出血斑(皮下出血)出現の可能性があります。
致命的な血栓形成を予防するために抗血栓薬は継続し、異常出血に対しては局所止血で対応します。
局所止血は縫合、パック剤、止血床により物理的に止血を行います。
処方医や口腔外科専門医との医療連携が重要です。
※ 抗凝固薬:ワーファリン(ビタミンK 拮抗剤)、イグザレルトなど
  抗血小板薬:プラビックス、パナルジン、バイアスピリン、バファリン、プレタールなど
■ ステロイド薬を投与されている方
ステロイド薬投与の最大の副作用は易感染性です。そのため、術後感染やインプラント周囲炎の重篤化のリスクファクターとなります。
ステロイド薬は骨形成・骨吸収に影響を及ぼすため、オッセオインテグレーションの獲得・維持に大きな問題となります。
■ 喫煙
喫煙はインプラント手術後の治癒と生着および予後に対するリスクファクターとなります。
喫煙者は粘膜に慢性炎症が存在するため、非喫煙者と比較してインプラント治療の成功率が低いことが報告されています。骨移植においても非喫煙者と比較して成績は不良です。
喫煙を継続すると歯周病が悪化するだけでなく、インプラント周囲炎やインプラント周囲骨の吸収を惹起する可能性が高くなります。
■ インプラント治療に対する総合診断
全身および局所状態の診察・検査を通して得た診断結果を合わせ、総合的なインプラント治療に対する診断を行います。
1. 長期的に安定的な予後が期待できる
2. 長期的に脅威をもたらすリスクがある
3. インプラント治療を断念すべきす。

メインテナンスの大切さ

インプラントは生体内のアゴの骨から生体外である口腔に貫通しています。 そのため、常に外部環境である口腔からの影響を受けており、治療終了後に上部構造が周囲環境と調和して 長期にわたりその機能を維持するには、プラークや咬合力のコントロールなどのメインテナンスを継続的に行う必要があります。
メインテナンス時には、インプラント周囲の骨吸収、炎症の有無を確認すします。インプラント体、アバットメント、上部構造の異常の有無を調べます。修復物は、早期接触の有無、対合歯との咬合接触や隣在歯とのコンタクトの喪失などの変化を確認します。咬合関係の不調和や過重負担の有無を確認して適切な咬合関係に調整します。
■ インプラント周囲炎 peri-implantitis
インプラント体周囲の軟組織に炎症が起き、支持骨の喪失まで引き起こしてきます。細菌感染や過重負担が原因でインプラント周囲の破壊が起こると、緩徐ではあるものの骨吸収は持続的に進行していきます。対処法は、粗面の滑沢化、β─TCP などパウダーを用いたエアアブレーション、レーザー照射などの方法があり、外科的にフラップを開いて廓清し、ケースによっては骨補填を行います。
■ インプラント体の動揺
メインテナンス時にインプラント体が動揺していれば、オッセオインテグレーションが喪失している可能性があります。
上部構造のみが動いていれば、アバットメントと上部構造の連結部あるいはアバットメントとインプラント体の連結部に問題が生じていることを疑います。
■ 上部構造の破損
強い咬合力、歯ぎしり、アクセスホールの位置やフレームワークの設計,フレームワークの適合性などが原因となります。

歯軋り(ブラキシズム)

ブラキシズムの種類にはグラインディング(歯をギリギリとこすり合わせる)、クレンチング(食いしばり)、タッピング(カチカチ咬み合わせる)の3つがあります。臨床的徴候として、触診時の咀嚼筋の圧痛、側頭筋および咬筋の肥大、外側翼突筋上頭の緊張などがあれば、ブラキシズムが推測されます。
歯がすり減ると咬み合わせが狂ってきて咬合性外傷 を引き起こす主要原因となり、過大な力は歯周を破壊します。さらに、ブラキシズムによる過大な負荷は、スクリューの破折や緩み、インプラント体の破折、上部構造の破損などの不具合を引き起こすリスクがあります。
特に夜間に起こり、歯周組織や歯に対して破壊的な大きな力がかかるため、パラファンクションと言われ注意が必要です。
眠っていて無意識下のため、自覚がない場合も多くみられるので注意が必要です。従って、インプラント治療した際には、マウスガード、咬合調整などが必要です。また、小径のインプラントを使用しない、上部構造を連結するなどの対応策も考慮します。

さらに、定期的に咬合をチェックする事が重要です。

歯周病の方のリスクファクター

インプラントに問題を起こす原因の一つに、歯周病が挙げられます。
メインテナンスの大切さ
歯周病原細菌の存在、 病因・宿主・環境などの歯周病リスクファクターの存在、骨欠損や根分岐部病変の存在、残存歯の予後が不確実 、欠損部骨量の不足、軟組織レベルの低下などです。
歯周病罹患歯のポケットからは、インプラント周囲溝へ細菌感染が波及する恐れがあります。
従って、歯周病の方にインプラント治療を行う場合には、徹底的な歯周基本治療を前処置として行うことが重要です。
その際には、プラークコントロール、歯周ポケットの深さ、プロービング時の出血、アタッチメントレベル、歯の動揺度、歯列不正による歯にかかる咬合力の偏りなどを調べて、骨吸収の原因となる要素を取り除きます。もし、歯周病だったところにそのままインプラント体を隣接歯より深く埋入し過ぎると、インプラント体周囲に深いポケットが形成され、審美的ならびに生物学的な問題(生物学的幅径)が生じます。
また、インプラント埋入治療の後も歯周病管理(メインテナンス)をすることが重要となります。