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名古屋で歯周病治療

歯周病の特徴と分類

診療案内
Diagnosis and treatment guide

歯周病の特徴

歯周病は歯周疾患とも呼ばれ、プラーク中の口腔細菌(歯周病原細菌)が原因となって生じる感染性炎症疾患で、歯肉炎と歯周炎に大別されます。さらに、非プラーク性の歯肉病変、歯肉増殖、壊死性歯周疾患、歯周組織の膿瘍、歯周-歯内病変、歯肉退縮および強い咬合力や異常な力によって引き起こされる咬合性外傷があります。
また最近では、歯周病は生活習慣病として位置づけられており、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、さらに糖尿病などの全身性疾患との関連性が示唆されています。

歯肉炎の特徴

歯肉炎は、歯肉のみに炎症が生じたものです。しかし、歯肉炎を放置するとセメント質、歯根膜、歯槽骨まで破壊が進みます。種々ある歯肉炎のうちの主なものは、「プラーク性歯肉炎」であり、以下にその特徴を記します。
歯肉炎の特徴
上の写真の歯の辺縁の歯肉には、赤く炎症を起こしているのがわかります。
  • 1)原因はプラークです。細菌性プラークは歯、歯肉、修復物および補綴物などに付着する多数の細菌とその代謝産物から形成されます。
  • 2)炎症は歯肉に限局しています。(臨床所見は、歯肉の発赤、浮腫、出血、疼痛、腫脹などです。)
  • 3)歯周ポケットは形成されるが、アタッチメントロス(ポケット底はエナメルセメント境)は生じません。歯槽骨吸収はありません。
  • 4)プラーク蓄積因子によって増悪します。プークコントロールを困難にしたり、細菌性プラークの停滞を促進する因子のことです。
  • 5)プラークコントロールによって炎症が改善します。プラークリテンションファクターの除去により歯肉の炎症はさらに改善します。
  • 6)歯周炎の前段階と考えられています。長期間放置すると大部分は歯周炎に移行します。

歯周炎の特徴

歯周炎は、歯肉に初発した炎症がセメント質、歯根膜、歯槽骨にまで波及したものです。
歯肉炎が歯周炎に進行するのは、主原因となるプラークが長期に渡り持続的に刺激しているためです。
プラークを増加させたり、それを取り除くのを困難にさせる因子(プラークリテンションファクター)、生活習慣などが関連します。
外傷性咬合などによって局所的に病変の進行が早まることもありまするが、進行速度は比較的緩慢です。
歯周炎の特徴
歯の間には隙間ができて前方に飛び出し(病的移動)、歯茎が痩せて歯根が見えています。
歯根露出が見られる場合、知覚過敏や根面のむし歯リスクが高くなります。
歯の動揺、歯間部への食物嵌入などの症状も出てきました。
  • 1)歯肉炎が歯周炎に進行して、セメント質、歯根膜、歯槽骨の破壊が見られます。
    歯周病原細菌によって産生される酵素や代謝産物などの影響によって生体の防御機構、主とし て免疫機能が亢進して、炎症が進行します。歯肉の炎症性破壊はセメント質、歯根膜および歯槽骨に波及していきます。
  • 2)歯周ポケットが形成され、アタッチメントロスが見られます。
    歯肉の接合上皮(付着上皮)や結合組織性付着の位置はCEJから根尖側に移動し、歯肉は歯根から剥離して歯周ポケット(真性ポケット)が形成されます。歯周ポケットが形成されると、歯周ポケット内部は自身で衛生管理できないため細菌性プラークはさらに増加して、歯周炎をより進行させます。そのため、歯肉縁上プラークコントロールを徹底する必要があります。プロービングポケットデプス (退縮がある場合はアタッチメントレベルを使用)は、歯周炎の軽度:3mm 以下、中等度:4〜6 mm、重度:7 mm 以上 です。
  • 3)歯周ポケットが深くなると、歯周病原細菌が増殖して炎症を持続させます。
    歯周ポケット内は歯周病原細菌が増殖しやすい嫌気的な環境であり、細菌や有害な細菌代謝産物等が歯周ポケット上皮を通過して歯肉内へ入り込みます。慢性歯周炎では、Porphyromonas gingivalis(P.ジンジバリス)、Treponema denticola(T.デンティコーラ)、Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.アクチノマイセテムコミタンス)、Fusobacterium nucleatum、Treponema denticola(T.デンティコーラ)などが歯周炎の活動部位に多く検出されます。
  • 4)リスク因子によって増悪します。
    口腔清掃を困難にするリスク因子は、プラークリテンションファクターと呼ばれ、歯石、歯列不正、歯の形態異常、不良修復物、食片圧入、歯頚部虫歯、歯周ポケット、口呼吸などです。歯周ポケットが形成されると、歯周ポケット内部は自分自身で衛生管理できないため細菌性プラークはさらに増加し、歯周炎をより進行させます。
  • 5)外傷性咬合(早期接触,強い側方圧,ブラキシズムなど)が併発すると急速に歯周炎が進みます。
    垂直性骨吸収(angular bone defect)、骨縁下ポケットが形成されることがあります。
    外傷性咬合は歯周炎増悪の重要な局所性修飾因子です。
  • 6)全身性因子もリスクファクターとなります。
    歯周病原細菌やその毒素に対する抵抗力を低下(白血球の機能低下や剏傷治癒遅延など)させる全身疾病は、糖尿病などです。
    喫煙などの生活習慣も歯周炎の進行に関与します。
  • 7)休止期と活動期があります。
    歯周組織の破壊は常に一定速度で進むのではなく、活動期に急速に進行します。
    通常、BOP 率の上昇、アタッチメントロスや歯槽骨吸収が急速に進行した場合を活動期、その部位を活動部位とよんでいます。
    プロービング時に出血するのは、炎症活動部位です。
    アタッチメントレベルとは、歯周プローブをポケットに挿入した際の、セメント—エナメル境からプローブ先端までの距離のことを言います。
    アタッチメントロストとは、歯周病の進行によりアタッチメントが減少したことを言います。
  • 8)進行度に部位特異性があります。
    感染している歯周病原細菌の質(種類)や量および局所性修飾因子などの違いで、部位によって歯周炎の進行度に大きな差異がみられます。
  • 9)原因除去療法を主体とした歯周基本治療により、軽度歯周炎では改善あるいは進行停止します。
    しかしながら、中等度以上の歯周炎では、より複雑な歯周治療が必要となります。
    例えば、歯周外科治療、固定、咬合治療などを必要とすることが多くなります。
    現在、歯周組織再生療法を含め、失われた歯周組織の完全な再生を期待することは困難です。
  • 10)歯周炎が進行すると悪循環が生じ、さらに急速に進行しやすくなります。
    歯周ポケットが深くなると歯周病原細菌が増加します。深い歯周ポケットでは、浅い歯周ポケットよりアタッチメントロスを生じやすくなります。さらに、歯槽骨吸収などによって支持力が低下すると二次性咬合性外傷が生じ、細菌感染を併発して歯周組織破壊が進行します。
  • 11)歯周治療の一環として生涯にわたるサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)、メインテナンス、歯周病重症化予防治療が不可欠です。
    主原因である細菌性プラークおよび外傷性因子が口腔内に常に存在すること、適切な歯周治療を行っても深い歯周ポケットや根分岐部病変が残存する場合もあること、全身的因子の影響を受けることもあることなどから、歯周炎は再発の危険性が高くなります。

歯の動揺度の分類(Miller)

歯周病の検査では、歯の動揺度を調べるのに、Millerの歯の動揺度の分類を基本に行います。
0:生理的動揺(0.2 mm 以内)
1度:軽度、唇舌的に0.2〜1mm
2度:中等度、唇舌、近遠心的に1〜2 mm
3度:高度、唇舌、近遠心的に2 mm 以上、また垂直方向の舞踏状動揺
歯周病の進行、咬合性外傷などは動揺度が増加する要因となります。
■ 動揺歯の治療
動揺の原因が炎症なのか早期接触やブラキシズムなどの咬合性外傷が関与しているのか、注意深く判断します。
基本的には炎症に対する治療を優先し、その後、咬合調整や暫間固定あるいは永久固定を行います。オクルーザルスプリントの製作が必要な場合もあります。

歯周病の分類

■ 歯周病の分類 ■ (日本歯周病学会による歯周病分類システム 2006)です。

1) 歯肉病変 (いずれも限局型(localized)、広汎型(generalized)に分けられる。)
   (1) プラーク性歯肉炎  歯肉辺縁に存在する細菌群によって発症する歯肉の炎症です。
               プラーク単独性歯肉炎、全身因子関連歯肉炎( 思春期関連歯肉炎、月経周期
               関連歯肉炎、妊娠関連歯肉炎、糖尿病関連歯肉炎 、白血病関連歯肉炎)、
               栄養障害関連歯肉炎
   (2) 非プラーク性歯肉病変    プラーク細菌以外の感染による歯肉病変、粘膜皮膚病変、
                   アレルギー性歯肉病変、外傷性歯肉病変
   (3) 歯肉増殖          薬物性歯肉増殖症、遺伝性歯肉線維腫症
          歯肉組織のコラーゲン線維の過剰増生による歯肉肥大です。
          プラークコントロールを徹底することで、発症や再発をある程度防止できます。
          薬物性歯肉増殖症の原因となる薬物として、フェニトイン(抗てんかん薬)、
          ニフェジピン(降圧薬・ Ca 拮抗薬)、シクロスポリン A (免疫抑制薬)
          などがあります。
2) 歯周炎 (いずれも限局型、広汎型に分けられる。)
     全身疾患関連歯周炎、喫煙関連歯周炎、その他のリスクファクターが関連する歯周炎
   (1) 慢性歯周炎 歯周病原細菌によって生じる付着の喪失(アタッチメントロス)および
           歯槽骨吸収を伴う慢性炎症性疾患です。歯周ポケットの形成、排膿、出血、
           歯槽骨吸収及び歯の動揺を認めます。組織抵抗力低下時には急性化します。
   (2) 侵襲性(急速破壊性)歯周炎 全身的に健康ではあるが、急速な歯周組織破壊(歯槽骨吸収、
           アタッチメントロス)、家族内集積を認めることを特徴とする歯周炎です。
           一般的には、細菌性プラークの付着量は少なく、 10 歳 〜 30 歳代が多い。
   (3) 遺伝疾患に伴う歯周炎    全身的な異常を伴う遺伝疾患の口腔内症状として発現します。
           ダウン症候群、パピヨン・ルフェーブル症候群、家族性周期性好中球減少症
3) 壊死性歯周疾患 (いずれも限局型、広汎型に分けられる。)
     壊死性潰瘍性歯肉炎、壊死性潰瘍性歯周炎
4) 歯周組織の膿瘍          歯肉膿瘍、歯周膿瘍
         歯肉膿瘍は、隣接する歯周ポケットからの細菌感染や歯肉に対する外部からの
         刺激、歯肉への外傷や感染によって、歯肉結合組織に形成された膿瘍です。
5) 歯周-歯内病変 辺縁歯周組織と根尖歯周組織は解剖学的に近接しているため、互いの領域に疾患の
         影響が及びやすくなります。辺縁歯周組織の異常は根管側枝や根尖孔を介し歯髄
         に、歯髄側からの病変は根管側枝や髄管・根尖孔を介 し辺縁歯周組織に影響を
         及ぼす場合があります。
6) 歯肉退縮    辺縁歯肉の位置が、セメント- エナメル境 cemento-enamel junction:CEJ から
          根尖側方向へ移動し、歯根表面が露出した状態を言います。誤ったブラッシング
          による機械的なもの、辺縁歯肉の炎症、加齢的なもの、対合歯喪失による廃用性
          萎縮などによって生じます。歯根表面が露出すると、う蝕、摩耗、
          象牙質知覚過敏などが生じることがあります。
7) 咬合性外傷   咬合力によって生じる深部歯周組織(セメント質,歯根膜および歯槽骨)の傷害
          です。一次性咬合性外傷、二次性咬合性外傷に分類されます。
          咬合性外傷の臨床所見には、歯の動揺の増加、早期接触、著しい咬耗、
          深い歯周ポケットの形成、歯の病的移動、アブフラクション(くさび状欠損)、
          歯の破折などがあります。
■ 歯周病の新分類 ■ ( 2018 年米国歯周病学会/欧州歯周病連盟 )

2017 年 11 月にアメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病学連盟(EFP)は共催ワークショップを開催し、「歯周囲とインプラント周囲の疾患と状態」に関する新しい診断基準を作成しました。
旧来の侵襲性歯周炎と慢性歯周炎を1つの歯周炎としてとりまとめた上で、ステージとグレードという、診断のフレームワークが導入されました。
◇歯周炎の重症度・複雑度が4 つのステージ
 ステージⅠ:軽度歯周炎
 ステージⅡ:中等度歯周炎
 ステージⅢ:さらなる歯の喪失の可能性を伴う重度歯周炎
 ステージⅣ:歯列喪失(咬合崩壊・歯の移動・フレアアウト)の可能性を伴う重度歯周炎
◇歯周炎の進行リスクが3 つのグレード
 グレードA:遅い進行
 グレードB:中程度の進行
 グレードC:急速な進行
病変の重症度と広がりを分類することを意図して,ステージ I(最も軽症)からステージ IV(最も重症)の 4 つのステージが設定されました。
 歯間部の最も大きなCAL(クリニカルアタッチメントロス)は、
            ステージI:1-2mm 〜 ステージIV:≥5mm
 X線画像上の骨吸収は、ステージI:歯根長1/3未満(<15%)〜ステージIV:歯根長1/3を超える
 歯の喪失 ステージI、Ⅱなし ステージⅢ4本以内  ステージIV 5本以上の歯周炎による喪失
それぞれのステージにおいて拡がりを、限局型(罹患歯が30%未満)、広汎型(同30%以上)、または大臼歯/切歯パターンかを記載します。
進行リスクとしてグレード A(最も低い)からグレード C(最も高い)の 3 つのグレードが設定されました。
 グレードの修飾因子として、非喫煙者 A、喫煙者1日10本未満 B、喫煙者1日10本以 C 、 血糖値正常糖尿病の診断なし A 、HbA1c7.0%未満の糖尿病患者 B、 HbA1c7.0%以上の糖尿病患者 C バイオフィルムの蓄積程度以上に組織破壊 C、急速な進行and/or 早期発症を示唆する臨床徴候 C

広汎型 慢性歯周炎 ステージIII グレードB、 限局型 侵襲性歯周炎 ステージIV グレードC などと表記されます。
 慢性歯周炎では1 歯単位の診断で、中等度と重度歯周炎の罹患歯数が全歯数の30%未満であれば限局型、
 30%以上であれば広汎型に分類します。または大臼歯/ 切歯パターンかを記載します。
 侵襲性歯周炎においても、30%未満であれば限局型、30%以上であれば広汎型として分類しますが、
 AAP では、第一大臼歯または切歯の2 歯以上にアタッチメントロス(そのうち1 歯は第一大臼歯)があれば
限局型、第一大臼歯と切歯以外の少なくとも3 歯以上にアタッチメントロスがあれば広汎型に分類すること
が示されており、両者を勘案して分類します。